少しだけ。
この間、ある人に私の描いた絵を見せた。
そしてこう言われた。
「これはあなたの特技だね」
私は戸惑い一瞬口を噤んだ、何故なら今まで生きてきてずっと、私は人より秀でたことが1つもない人間だと思って生きてきたからだ。
人並みにはできるがそれを超えることは決してないと、そう思って生きてきた。
だから、絵を描くことが特技だと言われて戸惑ったのだ。
今までの私なら、確実に否定していただろう。
「そんなことはない、そんなものは誰だって描ける」と。
でもこの時は、一瞬戸惑い少し間を空けてからこう答えた。
「そうですね」
気恥ずかしかったし、この一言を言うだけでかなりの勇気を使った。
けれど、とても気持ちがよかった。
喉につかえていた物がストンと胃に落ちたような、清々しい気分だった。
私は私を少しだけ誇らしいと思えた。
私の絵は私しか描けないし、とても上手とは言えない絵だけれど、私は私の絵が好きだと心から思える。
それは少し、大嫌いだった自分を好きになれたということなのだろう。