カエルの声で。
冬の夜はあまり好きじゃあない。
雪は月の光を跳ね返し、あたりを明るく照らす。
なのに全ての音を吸収してしまうから、冬の夜の静寂が怖い。
真夜中、月明かりだけで少し遠くまで見渡せるほど明るいのに、聴こえるのは耳鳴りだけで、他は何も聞こえない。
まるで、世界で生きているのが私だけみたいに。
静寂が私を責める、不安をかき立てる。
でも今夜は違う、カエルが鳴いている。
家のすぐ側の田んぼで、たくさん鳴いている。
その声はなんの感情もなくて、ただ生きるために、子孫を残すためだけに鳴いている。
そんなカエルの声を聴いて思う。
「今夜は、何も怖いものなんてないよ」
そう言っているみたいだと、歪めて聞き取る。
自分の都合のいいように。
耳鳴りそっちのけで、カエルの声を探してしまう。
心地がいい。
カエルの鳴き声が、私の沸き立つ不安を穿つ。