みんなが私を置いて、どこかへ行ってしまう。
子供の頃から、好きなものが無くなってしまうことが大嫌いだった。
子供の頃に遊んでいたブランコも「もう壊れていて危ないから」と片付けられてしまって、
お気に入りのアライグマのぬいぐるみも捨てられてしまった。
私が卒業して数年後に廃校になってしまった小学校も、その校庭にあった回旋塔も、つき山の裏にあった梨の木に桑の実の木も、今は全部なくなってしまった。
遠くに見える山も、削られてダムになった。
思い入れももちろんあるけれど、思い出なんてたいしてなくても、もうそこにあるのが当たり前になっていて、何となく気に入っていて、だから突然なくなってしまうと、どうしようもなく悲しくなる。
最早それは私の一部で、私の人生になくてはならないもの。
それを突然、理不尽にもぎとられて悲しくて、寂しくて、代わりになるものなんてなくて、心が削られたような気分になる。
新しいものが嫌いって訳じゃあないんだ、ただ、私の宝物を奪わないで欲しいんだ。
それだけなんだ。
要は、あの時のまま私の心の最長は足を止め、大人になるまいと必死に抗っている、体は否応なく成長していくなかで、心だけが取り残されている。
何も壊れなければいいのに、誰も死ななければいいのに、ずっとそこにあり続けて、ずっと生き続けていればいいのに。
それで、ずっと私のそばに居てくれればいいのに。
どうせ気に入ったって、どうせ仲良くなったって、いつかは壊れてなくなって、いつかは離れていってしまうのに。
それでそのうちに、思い出も劣化して、風化して、思い出せなくなるんだ。
想いも思い出も全部、消滅するんだ。
まるで、初めから無かったみたいに。