見たくないから、見ないで。
高校生の時に好きだった先生がいて。
生徒という立場を使って、甘えていた。
断らないと分かっていたから、甘えていた。
私がどれだけ甘えても、我儘を言っても、先生は先生だった。
ちゃんと叱ってくれたし、たくさん話も聞いてくれた。
好きを勘違いした面倒な子供に、最後まで付き合ってくれた。
とてもいい先生。
初めはただすごい先生だと思って見ていた、学校にはもちろんほかの先生も沢山いたけれど、中でもこの先生は先生だと思った。
なんとなくね。
だからよく話すようになった、私が一方的に。
それで何となく優しいな、カッコいいなって。
かまって欲しくて、ただ話していたくて、全く周りが見えなくなっていて、自分1人が楽しんでいたことに気づかなくて。
好きなことを伝えたけれど、それでもあの先生は先生だった。
「異性への憧れは、恋愛に変わる」と言われてその通りだと思った。
それで、人に依存することは良くないことだとも言われた。
私は思い込んでいたけれど、違うとあの先生は気づいたいんだろうか。
私のあの気持ちは恋ではなくて、依存だと。
今は、あの頃の私の言動すべてが申し訳なくて、恥ずかしくてたまらない。
でも、無駄な事ばかりではなかったと思ってる。
あの学校で、私は私のことを多少なりとも理解はできた。
理解しただけで、共感はできなかったけれど。
私は私に共感はできなかった。
今でも真っ直ぐ歩けていない、歩き続けてすらいられない心に全く付いて行けてない。
もう卒業して何年も経つけれど、未だにまともに歩けていなくて。
しんどくて、辛くて、死にたくて仕方が無い時に、先生に会いたくなる。
甘えなくなる。
話を聞いて欲しくなる。
その気持ちはまるであのころと変わっていなくて、解決したいからとかじゃあなくて、ただ慰めて欲しくて、甘えさせて欲しくて。
断らないと知っているから。
でも、今は断られるだろう。
だって今だから、もう私はあの学校の生徒じゃあないから。
いやきっと本当は断らない、あの先生は優しいから。
断って欲しいんだ、私が。
未だにこんな気持ちでいる自分が嫌で、いっそ1度徹底的に拒絶して欲しいんだ。
だってそっちの方が楽だから。
他にもいろんなことを話せる人を、自分以外にも作った方がいい。
と言われたことがあった。
あの時は、先生に話せるからいいと思っていた。
思っていたから、今先生がいなくなって話せる人がいなくなった。
こうなることが分かっていたから、先生はああ言ったんだ。
先生が言ってくれたことを、全然聞いていなかった。
馬鹿だから、今しか見てなかった。
楽しくて仕方がない、今しか。
たまに、本当にたまに、先生が夢に出てくる。
2通りあって、先生がほかの生徒と楽しそうに話しているのをちらっと見掛けて嫉妬する。
もう1つは、すごく気分が沈んでいる時に先生がいて、後で話をすると約束する。
どのパターンも決まって先生とは全く話さない。
約束をして、会いに行く途中か会った寸前でいつも目が覚めるから。
いつも優しく笑っていのを見るだけ。
話す前に目が覚めると少しほっとする。
本当は夢に出てきてなんて欲しくない、そんな日は1日気分が沈むから。
まるで先生が悪いみたいな言い方をしたけれど、もちろん全く悪くない。
悪いのは私、仕方ないと飽きられて前に進めない私のせい。
私はあの人にもう迷惑はかけなくない。
二度と会いたくないし、顔なんて合わせられない。
今の私を見られたくない。