夏の朝
朝起きたら夏の空気になっていて、少しだけがっかりした。
暑いのも寒いのも嫌い。
でも、暑い時の扇風機を回してタオルケットにくるまって寝るとか。
寒い時の毛布の中の温かいところと冷たいところとか。
そうゆうのはとても好き。
だんだん食卓に家で育てた野菜とか、冷凍庫にあるアイスの数とかが増えていって。
蝉が鳴いて、6時のチャイムの曲が変わって。
そんなのに気づいてしまうと、私はなにをしているんだろうと想う。
ここに留まって、歩くことも前を見ることもやめて。
どんどん季節も人も進んでいって、嫌でも自分も歳をとって。
自分にとっていつが一番いい時期だっただろうかなんて、自分で自分を慰めるような。
そんなもの無かったのに。
全部が中途半端で、口ばかりで今まで何もしてこなかった。
言葉じゃあ分かっているのにきっと分かった振りをしているんだ、なんてそれもまた慰めのような、言い訳のようなもので。
少しでも見えないように、気が付かないように、聞こえないように。
でも、目も耳も塞ぐなんて怖いことは出来なくて。
何か言われていないか、どんな目で見られてるのか、どんなふうに思われているのか。
キョロキョロしながら、耳をそばだてながら、怯えてなんかいないって振りをしながら。
それをするのが嫌だからここにずっといるわけだけれど。
まともな生活に戻った時、またそれをしなくちゃあいけないんだと思うと、このままでいい、このままがいいと。
「私にはもう無理だから」
「頑張ったけれど無理だったんだから仕方が無いじゃあないか」
可哀想でしょって。
しょうがないって言ってよって。
阿呆な被害者づらして、全部自業自得以外の何者でもないのに。
もしかしたら全部。
こんな言葉も、私の言葉は全部中身がないのではないのだろうか。
全部借り物で、何かの真似をして口から出しているだけなのではないだろうか。
と、自分に疑心暗鬼を繰り返している。