あれが欲しい。
家族のこと。
本当は自分の気持ちを話して、「協力して欲しい」とお願いしたい。
けれど今更それは出来ない、その訳は私のつまらないプライドと、今までに何度も味わってきた家族への失望。
家族は皆なから私の話を聞く気がない。
聞く気がないなら黙っていて欲しい。
そっとしておいて、心の中で嘲笑っていていいから、触らないでほしい。
いつもそう、心の水面を一瞬たりとも揺らさぬように過ごしているのに、あの人たちはそこへ容赦なく小石をなげる。
波紋を広げ、大きな波にする。
それでも本気で嫌い憎めないのは、家族だから、親子だから、兄弟だから。
家族の絆が呪いになって、それを許さない。
贅沢な文句なのかもしれない、いやそうなのだろう。
毎日くだらない冗談を言い笑い合える家族が近くにいるだけで、十分幸せな話しなのだろう。
分かっている。
けれど私は、私の持っていないものをどうしても飽きらめることが出来ない。
何をしたって手に入らないと分かっていても、望んでしまう、願ってしまう、渇望してしまう。
そうやって今日も、隣の家の芝生を眺め指を咥える。