過ち。
バスの中で彼女と彼女の母親と目が合った。
「久しぶりに見かけたな」そう思った。
降車ボタンが押されたらしく、バス停より少し前でバスが止まった。
怯えたような表情した彼女を、彼女の母親が抱えるようにしてバスから降りた。
悟った、私のせいだと。
私とこのバスで乗り合わせてしまったがために、彼女は顔色を悪くし母親に抱えられながら降りていったのだ。
そして改めて自覚した、私が彼女にした事の罪の重さを。
私は一人の人間の人生をダメにしてしまったのだと。
今でも覚えている、彼女の怯え青白くなった顔を、そんな彼女の肩をさする母親の心配そうな顔を。
そして、血の気が引いて体が氷のように冷え切ったあの感覚を、私は忘れないだろう。
忘れられないだろう。